コラム

【第2回】事例インタビュー:中小企業診断士による事業引継ぎ(前編)

中小企業診断士の木下綾子さん(株式会社ステラコンサルティング 代表取締役)は、5年間で4件のM&Aを実行し、診断士としての活動と並行して異なる3つの業態の事業運営を行っています。本コラムでは、前編・後編の2回に分けて、木下さんが次々とM&Aを行った経緯や、本業である中小企業診断士と社長業を両立して感じたことなどを紹介いたします。木下さんの取り組みが、副業・複業で事業運営を志す方の参考になればと思います。

M&Aに踏み出したきっかけとは

木下さんは、もともとソフトウェアエンジニアとして電機・機械メーカーに勤務していました。中小企業診断士の資格を取得後、2014年に独立を果たしています。

独立当初は公的機関の非常勤業務や、経営支援・事業再生のコンサルティング会社での活動を中心に経験を積みました。独立から数年が経過したころ、業務の幅を広げるためにM&A仲介プラットフォームのアドバイザリー業務にも携わり、実際の売却案件を目にする中で「自ら会社を買って経営してみたい」という思いが芽生えてきました。初のM&A案件としてネイルサロンを承継、その後、アクセサリーEC、リラクゼーションサロンと続けて事業承継を行い、現在は、3つの事業を並行して経営しています。

譲渡直後の経営危機

初めてのM&Aとしてネイルサロンを承継した直後にコロナ禍が始まりました。客足は途絶え、いきなりの経営危機に見舞われましたが、ピンチを逆手にとってマーケティングと商品の双方を根本から見直し、ゼロから顧客開拓を始めました。業務改革を進める中で会社を離れるスタッフも出てきましたが、一人ずつ採用を行い体制構築を進めていきました。価格やマーケティングを抜本から見直したところで徐々に客足も戻り始め、2-3年たって、収益も黒字化の目途がついてきました。

仕組み化の強化

運営改革を進める一方で、オペレーションは徹底的に仕組み化し、木下さんが直接関わらなくても日々の運営は回っていく体制を構築しました。木下さん自身は神奈川県を拠点に活動していますが、銀座の店舗にはWebカメラを設置し、遠隔でもコミュニケーションがとれるようにしています。M&Aから5年たった現在、店舗に足を運ぶことはほとんどありません。

立て続けのM&A

同じことを続けるよりは、新しい取り組みに興味を持つ木下さんは、次のチャレンジとして、アクセサリー、リラクゼーションサロンと立て続けにを実行しました。

アクセサリーECは、従来の韓国からの仕入ルートに加えて中国からの調達先を開拓し、楽天、Yahoo!ショッピング、Qoo10等、複数のECモールに出店し、販路を広げました。

リラクゼーションサロンは、複数の診断士とともに立ち上げた会社でM&Aを実施し、木下さんが実質的な事業運営を担っています。同じ銀座という立地を活かし、ネイルサロンとのシナジーを期待してのM&Aでした。

まとめ

前編では木下さんが複数のM&Aを行い、事業を拡大されてきた経緯をご紹介しました。後編では、木下さんがスモールM&Aを実施するにあたり思い描いていたことや、事業運営を行ってみてあらためてわかったこと、さらに、今後の構想などについて伺います。


執筆者

江崎 大吾(えざき だいご)
中小企業診断士/スモールM&A研究会

EC・小売の領域で一貫して物流・ロジスティクス業務に従事。企画・管理から営業・オペレーションまで幅広く経験。2023年中小企業診断士登録。現在は、EC運営会社の物流子会社で経営管理の責任者を担うかたわら、物流・会計領域でのコンサルティング業務に従事している。